突然言葉が出なくなった日

もう数年経ちますが、あの日のことは今でも忘れません。

 

それまでも言葉が詰まったりする症状は少し出ていましたが、

当時上司からのパワハラに加え、仕事もかなり激務で、

自分自身、気にしている余裕がありませんでした。

 

 

ある日、取引先から電話がかかってきました。

少し話した後、先方から尋ねられました。

 

「担当者様のお名前を教えていただけますか?」

 

 

私は自分の名前を言えませんでした。

口は開いているのに言葉が出てこないのです。

しばらく黙っていると、先方は、

 

「もしもーし、聞こえますか?」

 

と何度も言っています。

私はどうしようもなくなって、電話を切ってしまいました。

 

そのままトイレに逃げ込み、震えが止まりませんでした。

 

電話切っちゃった・・・どうしよう・・・

その前に何あれ、全然言葉出てこなかった・・・

もう私働けないのかな・・・

このままどうなっちゃうんだろう・・・

怖いよ・・・

 

 

お尻も痛くなってきて、

いつまでも便器に座っているわけにもいかず、

自席に戻りました。

 

すると、同僚から、

 

「さっきの取引先から電話かかってきたよ。

途中で切れちゃったの?」

 

と聞かれました。

私は、

 

「え、本当ですか?」

 

と無理がありながらもとぼけるしかありませんでした。